【ちょっとだけエスパー】大泉洋にしか表せない「カッコよさ」が120%発揮された最終回は「ちょっとだけハードボイルド」
大泉洋“なんか”に泣かされてしまった。
12月16日に最終回を迎えた「ちょっとだけエスパー」(テレビ朝日系)でのことだ。大泉演じる「文ちゃん」こと文太の、四季(宮崎あおい)に対する愛の深さがふんだんに詰め込まれた最終回に泣いた人は、きっとたくさんいたと思う。
2070年の未来から2025年にやって来た麿赤児演じる「文人」が、自身のことを「京(けい)」と名乗り、2025年では岡田将生演じる「兆(きざし)」と名乗る「文人」に語った「全ての刹那は永久(とこしえ)に繋がる」のひと言が、ずっと心に引っかかっている。第8話の回想シーンでは、文人と四季がろうそくの前で「私は行ける気がする。文ちゃんとならとこしえまで」「では、とこしえを目指して、刹那のキス」などと話していたから、文人の心にもしっかり引っかかっているに違いない。
今作の脚本家である野木亜希子氏がどの作品でもずっと書き続けている、バタフライエフェクト=ブラジルで飛ぶ蝶の小さな羽ばたきが、様々に影響し合いながらめぐりめぐってアメリカでタイフーンが起きる、というか、風が吹けば桶屋が儲かるのように、という、その壮大な広がりを感じるたとえは、今作では「小さな1匹のハチが世界を変える」と言い換えられそうだ。
10年後に1万人規模の死者が出る災害で、四季は命を落とす可能性が極めて高い。しかし、文太、桜介(ディーン・フジオカ)、半蔵(宇野祥平)、円寂(高畑淳子)の「2025年内に命を落とすことになっていた4人」が生き続けることで、未来は、ちょっとだけ変わることだろう。
「忘れてしまっても、相手が死んでも、愛は残る。ここまで真面目に言えたことがなかったけど、愛してる。四季を愛してる。四季がいる、この世界をオレは愛する」と四季に告白した文太は、ちょっとだけカッコよかった。
ラストで文太に愛する人を失った悲壮感がまったくないのは、四季と過ごした半年間で愛を知り、一生分のかけがいのない時間を半年間で過ごし、自分自身を愛し損ねていたことに気付いたからだと思われる。
「四季が生きていてくれさえすればそれでいい」
これが、愛を知った文太が出した答えだった。
第9話の最終回のみエンディングで浮かび上がった“あらすじ英文”には(第1話から第8話までは各話冒頭のタイトルバックで“あらすじ英文”が浮かんでいた)〈The Mission is endlessly difficult. Even so, it must eternally continue. That is what it means to love.(ミッションは果てしなく困難である。それでもなお、永遠に続けなければならない。それこそが愛するということなのだから。〉とあった。これはつまり、大ラスで桜介が「世界に花を咲かせるぜ」、円寂が「生きていくことが私たちのミッションね」、半蔵が「僕たちが生き続ければ未来のかたちは変わってく」、文太が「それが四季と世界とオレたちを救う」と言っていたのとざっくり言えば同じことだろう。
ちょっとだけハードボイルドな幕引きは、大泉洋にとてもよく似合っていた。しかし似合っていることがまた、小さくムズムズと腹立たしく思えてくるから、「大泉洋なんかに泣かされてしまった」と言いたくなる。
大泉洋は、ちょっとだけが似合う。そういうヤツだ。
(森山いま)
