民放ドラマの4-6月期平均視聴率がほぼ出そろった。天海祐希の「緊急取調室」(テレビ朝日系)が全話平均視聴率13.9%で圧巻の1位。2位以下は「小さな巨人」(TBS系)、「警視庁 捜査一課長」(テレビ朝日系)、「警視庁捜査一課9係」(同)、「あなたのことはそれほど」(TBS系)と続くが、沢尻エリカ主演で前評判の高かった「母になる」(日本テレビ系)は8位に沈んだ。
“3歳の時に行方不明になった息子が9年の時を経て突然現れる”というシリアスなテーマだったが、最終回まで見終わった視聴者からは落胆の声が上がっているという。子育て問題に詳しい女性誌ライターは言う。
「確かに内容が薄いドラマでしたが、一貫した主張はありました。それは昔ながらの母親観、子育て観です。現代では、虐待や育児放棄が社会問題となり、愛情のない母親から子供は保護されるべきという価値観が一般的。父親の育児参画も時代の流れですし、専業主夫も少なからずいる。そんな風潮の中、このドラマは“育ての親より産みの親”“父親は母親にはかなわない”という時代遅れの考え方を執拗に表現し続けた。何だか違和感がありましたね」
子どもの手が離れるまでは母親は仕事をセーブすべきという描き方も、女性就業率が出産・育児期に落ち込む「M字カーブ」を他の先進国並みに解消していこうとする時代の流れに逆行している。出産を機に仕事をセーブしたくてもできない「0か100か」の選択を迫られ悩む女性が現実には多い中で、既に地位を築き仕事を減らしてもキャリアを失わない登場人物(板谷由夏演じるヘアメイクのワーキングマザー)にも、このドラマのリアリティのなさを感じるという。
「3歳までは母親の手元で育てないと子供に悪影響を及ぼすという“三歳児神話”まで持ち出してきたのは驚きです。保育園に子どもを預けて働く母親を批判する材料にも使われてきた、科学的にはとうの昔に否定されている理論。そこまで徹底的に過去の母親像にこだわるのなら、現代の子育てへのアンチテーゼや新たな提案、問題提起でもあればまだ納得できるのですが、そんな深みあるメッセージも感じられませんでした」(前出・女性誌ライター)
世のママたちには、シリアスなテーマとは裏腹の“子育てファンタジー”を見せられたと不満が渦巻いたようだ。
(稲垣まゆう)