学びの現場でお母さんからいただくことが多いのは「先生の言葉なら素直に受け取るのに、私が言うと怒り出すんですよね……」という言葉。子どものために言っているのに、どうしてお母さんの忠告を子どもは素直に受け入れられないのでしょうか。
「早く宿題をやった方がいいんじゃない?」「もう出発の時間になってしまうわよ。早く準備をしないと」「そんなことをしていて、やるべきことを終えられるの?」など、親からの指摘は、子どもが学校や習い事に間に合うように、子どもがより効率よくすべきことを終えられるようにと、サポートのつもりで渡しているものですよね。子どもはそのことはよく理解できていても、素直に「教えてくれてありがとう」なんて言えません。子どもはどうしても親に反発してしまうなのです。
そういえば筆者も子どもの頃はそうだったよなあと思いつつ、それはいったいなぜなのか、子どもたちの言葉に耳を傾け、日々研究しています。「だって、うるさいんだもん!」「わかっているのに言うからだよ」と答える子どもたち。彼らの心はどのような状態になっているのでしょうか。
言葉づかいや何を伝えるかという会話の内容の前に、お母さん自身がイライラしていたり、怒ったりしていることが原因だと主張する子が多いです。子は親の鏡とよくいいますが、怒鳴られたり呆れた表情で伝えられたりすると、うれしい気持ちでは受け取れません。そのため、応える側も自然とイライラし、無視しようとしたり、わざと反対のことをして心の中にとどめておけないイライラをぶつけたりしてしまうのです。
学校や習い事などで“教える側”というイメージが染み付いているコーチや先生からなら、「あなたはここが弱いから鍛えていこう」と、多少自身の弱みに触れられても、素直に受け取ることができます。しかし、関係性の近い家族や友だちは別。「あなたはできていない」と言われることにカチンとくるうえ、「あなたはどうなの?(お母さんだって○○をやっていないじゃないか!)」なんて反論まで出てきてしまいます。自分ばかりを否定されるという意識は、“失敗する前に気づかせてもらえてよかった”という、素直な心を閉じ込めてしまうようです。また、“失敗する前に”というタイミングもポイントです。未来のことはわかりませんから、「言われなくたってちゃんとできたもん!」という、余計な意地まで張ってしまうのです。
そのため、優しく言う、それとなく(別の要件として)伝えるなど、よほどの工夫がない限り、親からの忠告は届きにくいようです。他にも、他の大人に伝えてもらったり、“失敗も経験”と子どもの挑戦を見守ったりするなど、わざと伝えないようにすることも、子どもに素直に行動させる選択肢の一つです。
子どものこうした言動にお悩みのお母さんは、ぜひ、機会があれば試してみてください。
(Nao Kiyota)