「AI時代なのだから、パソコン操作は当たり前のようにできないと……」「いやいや、ゲームばっかりしてしまうのだから渡さない方が……」。パソコンは高価なものであり誘惑も多いからこそ、幼い頃から買い与えてよいものかどうか迷ってしまいますよね。教育現場にいると、お母様からの「電子機器はいつ買い与えるべきですか?」という質問をたくさんいただきます。
筆者は小学校4年生頃に、初めて自分のノートパソコンを買ってもらいました。パソコンですぐにできることといえば、ゲームとメール。デフォルトでインストールされているゲームは、頭を使うシンプルなものばかりだったのであまり興味を持てず、基本的にワードで文章作成をしたり友だちとメールをしたりしていました。
とくにメールでは、子ども同士のコミュニケーションに大苦戦。表情や声で届けるのと文字だけで送るのとでは気持ちの温度差があること、一度送ってしまったら取り返しがつかないこと、思いを整理して文章にまとめることなど、たくさんのことを学びました。
もちろん、タイピングの技術やインターネットの使い方も自然と覚えていきました。筆者が子どもの頃はインターネット「使い放題」のパッケージは珍しかったので、繋げた時間をしっかり計っていくらかかったか、毎回チェックしていたことも覚えています。
パソコンがそばにあることが当たり前の生活をしていましたから、テスト前に要点を書き出してまとめたり、お小遣いをエクセルシートの表計算で管理したりもしていました。分からないことは父親に質問したり調べたりして基本的な情報処理はできるようになり、中学・高校とパソコンの授業で困ったことはありません。大学生以降も「調べてやってみたら、できる」という自信がついていたため、パソコン操作に苦労することはなく、何かあれば「パソコンでできるのでは?」と、試行錯誤して仕事を効率化することもできるようになっています。
このように、幼い頃から電子機器に触れていたからこそ、「言われたことを何とかやり遂げる」のではなく、「自らのアイデアを、電子機器を使って実現しようとする」姿勢ができたのだと思っています。
スマホも同じです。ただアプリゲームで遊ぶだけでは何にもつながりませんが、文章を書いたり、絵を描いたり、写真を加工したりするアプリなど、“生み出す”遊びに没頭することに大きな価値があります。何かを作り出そうとするとき、その材料や手段はこれまでの経験の範囲でしか選べません。そこに高性能の電子機器があれば自ら使いこなし、別の価値を生み出せるクリエイターになれるのです。
「悪用しないか」「目が悪くならないか」「宿題をやらなくなるのでは」など、デメリットをあげればきりがありませんが、これらは事前にしっかり「家庭のルール」を決めておけばよいことでしょう。子どもたちが大人になったときに当たり前のように使いこなして欲しいものは、小さい頃から触れておくに越したことはありません。電子機器に押しつぶされないようにだけはサポートしながら、よりよく活用していけるよう導いてあげるのがよいでしょう。
(Nao Kiyota)