ジャニーズ事務所が誇る和のスーパーエンターテインメント「滝沢歌舞伎ZERO」東京公演が4月10日、新橋演舞場で幕を開ける(~5月19日)。企画・構成・総合演出をジャニー喜多川社長が、演出を元タッキー&翼で昨年芸能界を引退した滝沢秀明が担う。“滝沢”の名を冠しながら本人が不在となるのは、今年が初めてだ。
滝沢から主役のバトンを渡されたのは、ジャニーズJr.のなかでも抜群の身体能力を誇るSnow Man。その重責や葛藤、舞台裏はドキュメンタリー番組「RIDE ON TIME ~時が奏でるリアルストーリー~」(フジテレビ系)で3月期、1カ月にわたって放映された。
舞台はナマモノとあって、06年にスタートした「滝沢歌舞伎」もこれまでに幾多の困難に直面してきた。記憶に新しいのは、滝沢との初共演で話題となったV6・三宅健の骨折だ。アイドル誌のライターが当時をこう振り返る。
「2人は16年から18年まで共演。最初の年の『滝沢歌舞伎2016』の3日目の昼公演で、客席の上を飛び回る『フライング』から転落して着地に失敗。右母趾基節骨を骨折して、全治3カ月と診断されました」
骨折は、36年間生きてきて初の経験だった。結局、同日の夜公演は、予定より20分ほど遅れて開演。上演前、座長の滝沢から演出の一部変更が伝えられた。ところが三宅は、残り46公演を代役なしで完走するという驚異の忍耐力を見せている。この原動力となったのが、森田だった。
「森田が初めてこの舞台を観に来たとき、三宅に『おまえは今日どうすんの?踊らないの?』と聞いてきた。それに、『演出を変えて、上半身だけで踊るようにしてんだ』と答えると、『踊れよ。おまえの踊りを(ファンは)観にきてるんだから』とハッパをかけた。これで負けず嫌いの三宅に火がつき、その日から本来の演目に戻し、足が折れた状態のままラストまで乗りきったそうです」(前出・アイドル誌ライター)
この舞台で得た自信が次の大きな仕事に繋がり、三宅は今年、自身初の歌舞伎に挑戦。3月24日、無事に千秋楽をむかえた「六本木歌舞伎 第三弾 『羅生門』」で、歌舞伎役者・市川海老蔵と互角に渡り合った。
三宅に焚きつけた森田といえば、多くの主演舞台作が国内外の賞を受賞している。それだけに、ジャニーズJr.時代から人気を二分してきた“相棒”が怪我を理由に演目を変えた甘えが許せなかったのだろう。
ちなみに森田は、妻で女優・宮沢りえと交際・結婚に至ったきっかけも舞台共演。演出家で映画監督の故・蜷川幸雄さんの作品だった。
“宮沢のダンナ”の叱咤激励によって、舞台俳優としてさらなる境地を切り開いた。来年デビュー25周年をむかえるV6だが、長続きの秘訣は、本音をぶつけ合える関係性にあるのかもしれない。
(北村ともこ)