反社会的勢力への闇営業やトップのパワハラ発言など、様々な騒動の渦中にある吉本興業だが、こと視聴率という観点においては各テレビ局に多大な貢献を果たしていると言えそうだ。
今やお笑いの分野に留まらず、芸能界のあらゆるシーンを席巻している吉本の所属芸人は、各々が抱えるレギュラー番組において一連の騒ぎに対するコメントを求められるケースが多く、世間もまた彼らの一挙手一投足に熱視線を送っている。
特殊詐欺グループの宴で直の営業を行った当事者である雨上がり決死隊の宮迫博之とロンドンブーツ1号2号の田村亮による号泣謝罪会見が7月20日に開かれると、その翌日に緊急生放送という形で異例の対応を見せた、ダウンタウンの松本人志がレギュラーを務める「ワイドナショー」(フジテレビ系)は同番組史上最高の16.7%もの平均視聴率を記録。自身の所属事務所を厳しい口調で非難する放送回が過去最高となったことは、松本にとって皮肉な展開かもしれないが、日曜日の朝10時という激戦区に高視聴率を達成できた同番組のスポンサーはその恩恵をたっぷりと享受しているはずだ。
また、同じく松本がレギュラーを務める「松本家の休日」(ABC)や、今や吉本の看板芸人にさえ上り詰めた極楽とんぼの加藤浩次司会の情報番組「スッキリ」(日本テレビ系)も軒並み高視聴率をマーク。とりわけ後者ではMCの加藤が激昂し、上層部を激しく糾弾する一幕もありながら、“吉本芸人が吉本興業を非難する”という構図は、現在のところ視聴率に直結するホットな組み合わせとなっているのかもしれない。
「新宿のルミネ・ザ・よしもとでも、中堅芸人らはすでに吉本の騒動をネタにし、観客からも爆笑という形でポジティブな反応を得ています。つまり、吉本興業は反社との繋がりに関する疑惑や、パワハラ騒動を起こしている一方で、それらを肥やしにした劇場チケットの売り上げや、各テレビ局での高視聴率を記録し、しっかりと自社の利益に繋げています。これこそが吉本の不思議な強みであり、松本も今回のようなトラブルをどんなに茶化されても許されてしまうのが吉本の良さだとも表現していました。同じく芸能界を代表するプロダクションであるジャニーズ事務所が同じような手法を取ることは絶対にあり得ないでしょうし、そのような吉本にしかない柔軟性や、どんな状況すらもお金に換えてしまう“あきんど魂”はズバ抜けている印象です」(テレビ誌ライター)
爆笑問題の太田光も自身のレギュラー番組にて「吉本を攻撃しているのが吉本芸人で、これで高視聴率を取ってるということ。結局吉本が得してるのは悔しくてしょうがない」と声高に叫んでいた。
本来は不祥事や騒動を起こした側の立場である吉本だが、この巨大な“笑いの総合商社”にとっては、そんな絶体絶命の逆風こそが推進に向けた原動力となるのかもしれない。
(木村慎吾)