シンガーソングライターの山下達郎が1月19日放送のラジオ番組「山下達郎のサンデー・ソングブック」(TOKYO FM)に出演し、昨年末のNHK紅白歌合戦で披露された“AI美空ひばり”について苦言を呈している。
国民的歌手の美空ひばりさんがこの世を去って30年の節目を迎えたということもあり、2019年大晦日の紅白歌合戦では、AIなどの最新技術を駆使して蘇らせた“AIの美空ひばり”が新曲「あれから」を歌い上げる姿がお披露目されたが、この“世界初”となる試みには賛否両論が巻き起こる事態となっていた。
そうした中、山下はリスナーから寄せられた「昨年の紅白、“AI美空ひばり”についてはどう思われますか? 私は技術としてはありかもしれませんが、歌番組の出演、CDの発売は絶対に否と考えます。AI大瀧詠一とかAI山下達郎なんて聴きたくありません」との意見に対し、「ごもっともでございます。一言でも申し上げると、冒涜です」とコメント。故人のAI技術による復活には反対の立場を示している。
「紅白での“AI美空ひばり”については、主に若年層が利用しているSNSやネットでは反対の声が大多数となっているものの、中には“泣きながら喜んだお年寄りもいる”との声もあり、高齢者がネット上で意見を書き込むことは稀ですから、全体でみれば、賛否は真っ二つといえるかもしれません。違和感や嫌悪感が生まれてしまった要因としては、かつての代表曲である『川の流れのように』などの既存の楽曲をAIに歌わせるのではなく、新たにリリースされた楽曲をAIの美空ひばりさんに歌わせた点にあるのでしょう。まるでコンピューターが“美空ひばりさんであればこう歌うだろう”と予測で解析したかのように捉えられ、たとえ美空さんの視覚的な復活を実現できたとしても、歌い方の間やリズムの取り方までをもAIに委ねてしまうことについては批判の声が多いです。こういった試みが慣習になってしまえば、歌手が“永久に”活動し続けることが可能になり、ビジネスにおける旨みに繋がってしまうこともまた反発を受ける理由のひとつでしょう」(テレビ誌ライター)
ネットでも「山下達郎の意見に全面的に賛成。あの歌は生前のひばりさんの声をAIが処理したものだが、歌い方は歌手個人の頭脳と感性で決まるものであり、AIにそれを再生させる能力はない」という声や、「亡くなった方とAIでも良いから逢いたいって人にはいいかもしれないが、大っぴらに紅白でやるとなるとやはり経済的な理由なのかな?と思ってしまう」との指摘もある。
今後、AIによる故人の復活と、その“AI歌手”の新曲リリースの是非については議論を重ねる必要がありそうだ。
(木村慎吾)