再放送中のNHK連続テレビ小説「あまちゃん」が急展開を見せている。
6月9日放送の第59回では、水口(松田龍平)がヒロインのアキ(能年玲奈)に手渡していた名刺を、母親の春子(小泉今日子)が発見。それまでは琥珀職人見習いだと思われていた水口が実は、大手芸能事務所からアキとユイ(橋本愛)をスカウトしに来たスカウトマンだったことが判明した。
一方でユイは、アイドルグループ「アメ横女学園」の3期生オーディションを受けることに。物語の舞台が北三陸から、アイドルの本場である東京に移り変わっていく気配を見せている。
「本放送の2013年当時、この急展開についていけないという朝ドラファンも少なくありませんでした。メイン視聴者層の中高年女性にとって、アイドルの物語はさほど興味をそそられるものではありませんからね。その後のあまちゃんフィーバーから見ると意外ですが、当時は作品のテーマがアイドルに代わったことにより《離脱します》という視聴者もザラにいたのです」(テレビ誌ライター)
そんな状況にもかかわらず「あまちゃん」は平均視聴率20.6%のヒット作となり、10年後の現在も良作として語り継がれている。
朝ドラファンにはなじみの薄いアイドルをテーマにしながら、なぜ視聴者から支持される作品になったのか。そこには本作ならではの理由があったというのだ。
NHK放送文化研究所が2019年に発表した資料によると、「あまちゃん」の視聴者は一人当たり7回のツイートを発していたという。2.2回だった2作前の「梅ちゃん先生」から3倍以上に増えていたほか、同時期に放送されていた大ヒットドラマ「半沢直樹」(TBS系)では1.2回だったことから、実に6倍近くもつぶやかれていたのだ。
このツイート回数に関してNHKでは「これまで、あまり目に見えなかった視聴者の“熱”が、SNSにより可視化」した分析。ツイッターは2010年ごろから広まっていたが、ドラマを語るツールとして定着したのが「あまちゃん」の2013年ごろだったのかもしれない。
「ドラマについてツイートするのが一般的になってきた時期に、『あまちゃん』は視聴者にとって『つぶやきたくなるドラマ』として注目されたのでしょう。同作品には様々なコメディ要素が込められているほか、過去のアイドルに対するリスペクトも続出。その一方で2013年当時のアイドル業界も色濃く反映しており、様々な世代の視聴者がそれぞれ言及できる要素が満載だったのです。まさにSNS向きの作品であり、2013年時点で制作側がSNSを視野に入れていたのであれば、その先見性は恐るべしと感心せざるを得ません」(前出・テレビ誌ライター)
2023年の現在に至っても再放送がツイッターをにぎわせている「あまちゃん」。今では一人当たり7回どころでは済まないほどに、視聴者が作品についてつぶやいているのではないだろうか。