そろそろ秋の気配が忍び寄って来た。猛暑より台風が気になるということは、そういうことだろう。
今年の夏は暑かったと振り返る時に忘れてはいけないのが、この夏の岡田将生の活躍ぶりだ。放送中のNHK朝ドラ「虎に翼」では「なるほど」が口癖のコミュニケーション能力が低い裁判官であり、伊藤沙莉演じるヒロインの再婚相手でもある星航一、公開中の映画「ラストマイル」ではホワイトハッカーの経験がある巨大物流倉庫のチームマネージャーであり、満島ひかり演じるヒロインのバディでもある梨本孔を好演している。
どちらもヒロインの相手役というポジションなのは、岡田にはヒロインを輝かせてくれる能力に長けているからだろう。来年2月公開の映画「ゆきてかへらぬ」でも、広瀬すず演じるヒロインの相手役を務めているから、「ヒロインの相手役役者」と呼ばれてもおかしくない。
そんな岡田だが、放送中のドラマ「錦糸町パラダイス~渋谷から一本~」(テレビ東京系)で演じている坂田蒼は違う。プライベートでも親交があり「劇団年一」の仲間でもある賀来賢人、柄本時生、落合モトキと共演しているこの作品では、岡田が輝かせなければいけないヒロインがいないのだ。登場人物たちがそれぞれ自分の過去と向き合い、それによってこれまでのエピソードが立体的に見えてくる仕組みになっているので、表向きは観光客向けのフリーペーパーのライターをしている蒼(岡田)が、なぜ素性を隠して悪事を暴くための証拠動画や画像などを「狼」のイラスト付きの二次元コードを使って町にばらまいているのか、そろそろわかってくることだろう。
ヒロインを支えていない役者・岡田将生は珍しい。見逃したら損するよ。
(森山いま)