お笑いコンビ・とんねるずがMCを務めたフジテレビ系「とんねるずのみなさんのおかげでした」の人気企画「男気ジャンケン」には当初、同局からNGが出されていたのだという。その原因と、放送に至った経緯を同番組の演出家・マッコイ斉藤氏が振り返っている。
9月16日に公開された元K-1世界王者・魔裟斗のYouTubeチャンネルにゲスト出演した斉藤氏は、2018年まで放送されていた「みなさんのおかげでした」のヒット企画について語った。
同番組では2011年より「前略、道の駅より」と題した爆買い企画をスタートさせたのだが、これは、とんねるずの石橋貴明と木梨憲武を含めた出演者全員が、立ち寄った道の駅や飲食店などでジャンケンをし、勝った者が店内の商品を大量に購入しなければならないというルール。ジャンケンの勝利者は「よっしゃー!」と喜びながら会計をするのが掟だった。
後に「男気ジャンケン」と改題し、ビートたけしやタモリ、舘ひろしといった大御所タレントらをゲストに招く人気企画へと成長。ただ、斉藤氏によると、当初の案は“ジャンケンで負けた人が罰として支払う”という内容だったが、フジテレビ局内から「負けた人が払うのはいじめやパワハラに見えるんじゃないか?」「それを放送するのは良くないんじゃないか?」と反対の声が上がっていたとのこと。
こうした逆風にも斉藤氏は「絶対に面白くなる」との自信があったと振り返り、なんとか上層部を納得させるべく、負けた人ではなく勝った人が支払うルールに変更。フジテレビに対し「“勝って払いたい”と言えばいいんですよね?」と説得したところ、局からは「勝って自分が払いたいという分には止められませんから、それは良いんじゃないですか?」とOKをもらい、ようやく「男気ジャンケン」が誕生したのだという。
「同企画には商品を爆買いさせる罰ゲーム的な要素の他に、地方の活性化という趣旨を含ませ、購入する商品を各地の特産品に絞ったり、あえて売れ残っている商品を“全部買い取る”という仕掛けが特徴的でした。これにより、いじめやパワハラといった悪印象を薄めたかったのでしょうが、フジテレビからすると『めちゃ×2イケてるッ!』内の企画『七人のしりとり侍』が“いじめを助長している”とクレームを受け打ち切りになった経緯があるので、なかなか認めづらかったのでしょう。同企画の打ち切り以降、フジのバラエティでは“勝負に負けた人に罰を加える”といった企画が敬遠されるようになっていましたからね」(放送記者)
コンプライアンスやモラルを意識せざるを得ない世の中になり、「めちゃイケ」と「おかげでした」はともに2018年春をもって放送終了した。その裏では、あの手この手を駆使して番組企画を通そうとするテレビマンたちの知恵比べがあったようだ。
(木村慎吾)