5歳の時に松田聖子を見て、「すごい夢とロマンがあふれてて、キラキラしてて『なんてかわいくてきれいな世界なんだろう』と感動したんですね」「(松田聖子のような)きれいに装えるボーカリストみたいになりたい」と、歌手を夢見たきっかけを明かしたのは、氷川きよしとして2000年から歌手活動しているKIINA.だ。さる12月26日放送の「MUSIC SPECIAL氷川きよし+KIINA.」(NHK)でのことだ。
そして高校時代に演歌と出会った。これについては、「(自分を)気持ち悪くなく見せるためにはどうしようかって思った時に、自分の中にあるものと正反対の“男歌”を歌ったりとかして、違う自分になるっていうか」と試行錯誤していた当時を振り返った。その頃から「歌が光だった」と語った。
2006年にリリースした11thシングル「一剣」で日本レコード大賞を受賞する。しかし、「歌の主人公に近い自分になろうとしたけど、どうしても普段の自分と歌の自分と乖離してしまって。ギャップっていうか。そこがちょっとやっぱキツかったですよね。でも、それとつき合っていかないと『生きていけないんだ、自分』(と思い込んでいた)」と振り返る。そのため「みんなが『いい』って言うことを取り込もうって思ってたから、なんかやっぱりね、すごくこう、淋しかったんだと思う。なんか“自分”が無視されているような気がして」と、本来の自分を押し殺して「氷川きよしという虚像」を作り上げながら苦悩していたことも口にした。
しかし2017年にリリースした32ndシングル「限界突破✕サバイバー」と出会い「ものすごい発散になったんですよ。押し殺して耐えて、グッ…とした中からブワーッてなったから。『もっとこういう衣装着たい』とか、『もっと自由に自分の可能性を広げていきたい』と思いましたよね。『私はこれだから』っていう強めな部分がすごい発散できた」そうだ。これ以降、自分を解放できるようになり、自分らしい衣装やビジュアルを追求できるようになったと打ち明けた。
さらにこの頃から作詞に挑戦したりKIINA.と名乗るようになったとも。
「“きよし君”というキャラクターが(自分と)すごくかけ離れてて、内面を見てもらってない感覚があって。違和感というか、『自分じゃない』というのがだんだん重なってきちゃったというか。自分は好きですね。KIINA.って名前が。KIIナチュラルですからね。いかにナチュラルでいられるかっていうところが自分の目標だったので、『KIINA.』って呼び捨てにされたほうがしっくりくるっていうか。『はい、私ですけど』みたいな感覚があったんで。わかってもらえないんですけど」
淋しそうに微笑む様子は、間違いなく氷川ではなくKIINA.にしか見えなかった。しかし、どれだけ方向転換しても「氷川きよし」として積み上げてきたイメージは重く大きく、「KIINA.です」と言うと「KIINA.でデビューすればよかったじゃん」などと言われて困った時もあったそうだ。
2023年明けから約1年8カ月、「氷川きよし」から離れて今後の生き方を見つめ直した結果、「氷川きよしも大事にしながらKIINA.でいればいいんだって、そういう2つの自分がいていいんじゃないかなって」思うようになったと包み隠さず語り、2024年をしめくくる「紅白歌合戦」では、氷川きよしとして「白雲の城」を披露するというから期待したい。
(津島修子)