お風呂のダイエット効果というと、いつも注目されるのが温熱効果によるエネルギー消費と基礎代謝の上昇です。年齢や体重、性別などによって差が出ますが、一般的には10分の入浴で30~40kcal、体脂肪にすると5g程度のエネルギーが消費されるといわれています。
確かにこれらの効果は、多少なりとも脂肪の燃焼には影響を与えます。日々続ければ減っていくとはいえるのですが、普通は摂取するエネルギーのほうが上回るもの。劇的な変化は期待できません。そこで注目したいのが、『インスリン・システム』を利用した、肥満防止法です。
「理論的には入浴でインスリン分泌をコントロールして、肥満を予防することはできます」というのは、医学の面から入浴の効果を研究している医学博士で、東京都市大学教授の早坂信哉さん。早坂さんは「食後30分~1時間後に入浴を始めると、血液が体表に集まって一時的に内臓の消化・吸収機能が落ち、糖質の吸収速度が緩やかになるという報告があります。すると、インスリン分泌量が減って体脂肪合成量も落ちるので、結果的に肥満を予防することが期待できるのです」と続けます。
インスリンは脂肪の蓄積を促すだけでなく、栄養素を取り込んで細胞に運ぶ役目もしているホルモン。そして、食後に血糖値が急激に上昇すると、通常の30倍ものインスリンが分泌される「追加分泌」が起こることがあります。こうなると余剰な糖質を脂肪に変換して、保存型のエネルギーである体脂肪として蓄えてしまうのです。それが、肥満の原因になるというわけです。
食後30分~1時間後に入浴することで、自律神経の働きを整えてインスリン分泌を抑制し、肥満を防ぐ効果を期待できるのが“お風呂ダイエット”です。このインスリン・システムを上手に使って、太りにくい体を手に入れましょう。
(医療/フィットネスライター・松尾直俊)