なぜ引退を決意したのか…。いまだに視聴者は疑問に感じていることだろう。
3月26日放送のNHK連続テレビ小説「ブギウギ」第123回では、歌手引退を決意したヒロインのスズ子(趣里)が、引退記者会見を開くまでに至る経緯が描かれた。
マネージャーのタケシ(三浦獠太)は前回、スズ子が口にした引退に対して強硬に反対していたが、今回は前言を撤回。スズ子の歌に励まされた日本全国の人たちに対してお礼を伝える必要があると説得し、引退会見を行うこととなった。
「スズ子のモデルである“ブギの女王”こと笠置シヅ子は、恩師である作曲家の服部良一氏に相談することなく引退を発表し、服部氏が激怒したと伝わっています(後に和解)。それに対して本作ではスズ子が作曲家の羽鳥善一(草彅剛)に引退の意向を伝えていますが、これはドラマ化における脚色として理解できるところ。ただ視聴者がさっぱり理解できないのは、スズ子が引退しようと思った理由にあります」(テレビ誌ライター)
スズ子は前回、引退の理由についていろいろある気がすると語りつつ、「ひとつ確かなのは、ワテは年末の歌合戦で燃え尽きたと思いますねん」と羽鳥に打ち明けていた。
今まではステージ後に放心しても、次にはこうしようという気持ちになれていたものの、大トリを務めた第7回オールスター男女歌合戦の後は「もうええか、もうええやろ、ワテようやったんちゃうか」いう気持ちでいっぱいになったと明かしたのである。
しかし視聴者にしてみれば、そんなフワっとした理由で引退に至るものかと疑問に思うばかり。新進気鋭の若手歌手・水城アユミ(吉柳咲良)との新旧対決がここから始まるのかと思いきや、スズ子は「ワテはあの子から、水城さんからとてつもないエネルギーをもろうて、あれだけのステージがでけたんやと思ってます」と説明。どうやら男女歌合戦で燃え尽きてしまったというのだ。
「視聴者がスズ子の説明を理解できない背景には、スズ子の見た目が大きく影響していそうです。モデルとなった笠置シヅ子と同い年のスズ子は、男女歌合戦の時点で42歳。いろいろと衰えを感じてしまい、自分の将来にも悩むようになる時期です。ところが当のスズ子がさっぱり40代に見えず、視聴者に対して衰えを提示できていないので、視聴者が理解できないのも無理はありません」(前出・テレビ誌ライター)
笠置シヅ子は当時、高い声が出づらくなっており、服部氏が楽譜を書き換えることで対応していたという。後年には太ってきたことや身体が動かなくなっていたと笠置が述懐しており、自分らしいパフォーマンスができなくなったことからすっぱりと歌手を引退したようだ。
そういった苦悩が描かれていれば視聴者も「衰えが原因か…」と思えたはず。しかし男女歌合戦におけるスズ子のステージはむしろ「福来スズ子復活!」を印象付けるエネルギッシュなパフォーマンスとなっていた。これで引退と言われても、視聴者が納得できないのも無理のないところだろう。
「それに加えてスズ子を演じる趣里が、さっぱり42歳に見えないところも大きな理由の一つでしょう。33歳の趣里は童顔もあって実年齢より幼く見えており、20代のスズ子を演じる際にはまったく違和感がありませんでした。一方でスズ子が40代になってからは髪型などで変化をつけ、おそらくメイクも変えているはずですが、その変化がまったく伝わってこないのです。作中では年齢が明記されていないものの、『福来スズ子は42歳の設定です』と説明されたら、多くの視聴者が驚くことでしょう」(前出・テレビ誌ライター)
もちろんスズ子が42歳に見えないのは趣里のせいではなく、メイクなどを含めてそういった演出ができない制作陣の問題だろう。SNS上ではスズ子を演じる趣里への批判が大きいものの、演技の内容も含めてやはり制作陣の責任は見逃せないのではないだろうか。