子どもにおもちゃを買い与えたら楽しそうに手に取ったものの、正しい使い方で遊んでいない。例えば、「完成図通りの形を作り上げるおもちゃなのに、好きなピースだけを使って自分の好きな形を作っています」というご相談をいただくことがあります。こんなとき、「そうじゃないでしょ」とおもちゃの正しい使い方を教えるべきでしょうか。
このようなご相談をいただいたとき、同時にお伝えいただくことが多いのは「遊び方を伝えるんですけど、怒って放り投げてしまうだけなんです。結局、次におもちゃを手に取ったときにもオリジナルの遊び方にこだわり、私の話には耳を傾けません」というものです。
子どもは、今熱中していることに対して「そうじゃないでしょ」と伝えた場合、正しい方法を教えているのにもかかわらず反発することがありますよね。子どもたちは自分なりに考えた方法で手を動かし、遊んでいます。その遊びに集中しているときに別の方法を示されても、急に切り替えることは難しいのです。
一方で、全く違う方法で遊んでいるのに、偶然にもおもちゃの説明書通りの結果が得られた場合、別人になったかのように正しい遊び方での試行錯誤が始まり、「ここ、どうしたらいいの?」などと親に聞き始めることもあります。今楽しんでいる遊びの方法を否定されて正されると前向きになれないのですが、自分から目指すことができれば驚くほど正確に取り組もうとするものなのです。
「おもちゃ本来の効果を発揮しない方法で遊んでいる…」と思うと気持ちが焦ってしまいますが、自分なりの遊び方も没頭していくうちに飽きて気持ちが切り替わり、別の遊び方を探すようになります。気持ちが切り替わったときがチャンスです。隣で遊び方の説明書を見ながら、お母さんが楽しそうに手を動かしていると、うらやましくなって「ぼく(わたし)もやりたい!」「どうやるの?」と遊び方を問うようになります。子どもがその気になったところで、正しい遊び方を教えてあげるのがよいでしょう。
自分なりの遊び方でおもちゃを使っているときも、子どもの頭の中はフル回転。どうすると自分の思い描いたようになるか、試行錯誤しています。その時間も立派な脳トレです。「もったいない。きちんと遊びなさい!」と遮らずに、ぜひやめるまで待ってあげてください。その後に正しい遊び方も楽しめたら、一石二鳥なのですから。
(Nao Kiyota)