「彼を傷つけたくないから、こうしなくっちゃ……」「彼女を傷つけたくないから、ここはひとつ頑張らないと……」
こんなお互いを思いやる気持ちから、恋愛中の2人には“義務と演技”が生まれていきます。身体の関係のことだけではありません。日々の食事のときやラインのやりとりなど……。そんな中で、お互いがお互いを思いやって行動したことが、かえって関係を悪化させることが少なくないのです。
例えば、カフェで初めてのデート。彼が「いろいろ頼んでシェアして食べよ。僕、牡蠣のグラタンが好きなんだよね。あ、ある! 頼んでいい?」と言われたとします。本当は牡蠣が大嫌いだけど、彼に合わせなくてはと「うん、いいわよ。私も好きだから」と言ってしまったら……。彼はあなたが牡蠣嫌いということを知る機会を失い、デートの度に牡蠣を頼んでしまうかもしれません。
これはほんの一例です。でも、本当にこんなに小さな嘘の積み重ねが、2人の関係をぎくしゃくさせていきます。そうならないためには、牡蠣が嫌いならそれを最初から伝えることが大切です。
その際、「ごめんなさい。私、ちょっと牡蠣が苦手なの。でもあなたが食べたいのだからオーダーして」と、嫌いではなく“苦手”という言葉を使うのが、嫌いなものを伝えるときのポイントです。
一度スタートした義務と演技は、なかなか途中でストップすることができません。嘘をつきとおすために、何度も何度も嘘を重ねてしまうのです。すると、2人の間に空虚な空気が漂ってしまいます。本当のことを話せない気まずい関係になってしまうのです。それって、悲しいですよね。
すでに空虚感を味わっているのであれば、今すぐそれを埋めるためのチャンスを作ってください。少しずつ、自分の思いを彼に伝えられるようにしてください。まずは、「ごめんなさい。実は私、牡蠣が苦手だったの。最初のデートのときにね、あなたがメニューを見てうれしそうだったからそれが言えなかったの」と伝えてみてはどうでしょうか。
嫌いなものは嫌い。好きなものは好き。小さなことでも、相手に伝えること。それが2人の恋愛を楽しくするために必要なことではないでしょうか。
(恋愛カウンセラー・安藤房子)