俳優の三浦春馬さんが自ら命を絶って、1カ月余りが経った。8月15日には、三浦さんが役柄に強く影響を受けたというドラマ「太陽の子」(NHK)が再放送され、多くの視聴者の涙を誘った。
「同作品は太平洋戦争末期、核エネルギーを利用した新型爆弾開発の命を受けた若き研究者たちの懊悩を描いたドラマ。三浦さんは柳楽優弥演じる科学者の弟で、特攻隊の出撃命令を待ちながらも、肺の療養のため一時帰郷する陸軍下士官役。共に死の訓練を受けた仲間が死にゆく中で、自らは生き永らえた。その葛藤に苛まれ入水自死を図るのですが、兄の柳楽に助けられて『怖い…怖いよ…。でも俺だけ死なんわけにはいかん!』と慟哭するシーンには涙を禁じえませんでした」(テレビ誌ライター)
三浦さんが残した“遺書”について報じた週刊文春によれば、〈散る運命を背負いながら、家族の前では気丈に振る舞おうとする気持ちを考え胸が痛んだ〉と、この役柄と自らを重ね合わせたような記述があったという。
三浦さんは、役にのめり込み、そこから抜けるために時間を要するほど俳優という仕事に対して極めてストイックだったという。そんな三浦さんの生真面目さが表れているのが、今年4月に書籍「日本製」(ワニブックス)の刊行にあたって行われたエンタメサイト「モデルプレス」のインタビューである。三浦さんは、俳優として努力しつづける理由についてこう述べている。
「すごく端的にいっちゃうと、未来の自分に言い訳をしたくない。5年後、10年後を見た時に、夢を叶えられなかったら言い訳をするんだろうなと思って。なので、大切な人たちには自信を持って、胸を張って『こうして来たんだよ』と話せたら良いなと思っています」(モデルプレス 2020年4月18日配信記事より)
また、昨年発表されたファッションサイト「the fashion post」のインタビューでは、「10年後の自分」について問われ、こう答えていた。
「10年後って、40歳目前ですよね。自分がそうしてもらったように、後輩には何かを引き継いでいきたいです。僕自身が先輩から教わったこと、メリットや考え方、僕が伝えられることの中に後輩にとって必要なものがあれば受け取ってほしいし、そういうことができる自分でいたいと思っています。俳優として、そうやって仕事をしていきたいですね」(the fashion post 2019年9月19日配信記事より)
三浦さん自身、2019年の舞台「罪と罰」の主演を務めた際、共演した俳優の勝村政信から表現の多様さを教えてもらい感銘を受けたという。
三浦さんの仕事に向き合う真摯な姿勢は、きっと後輩たちに受け継がれていくに違いない。