日露戦争の開戦から来年で満120年を迎えるなか、朝ドラに「反戦メッセージ」が込められていると感じる視聴者も少なくないようだ。
9月13日放送のNHK連続テレビ小説「らんまん」第118回では、明治37年(1904年)に勃発した日露戦争に触れる場面が。明治42年には渋谷から代々木にかけての広い敷地に陸軍の代々木練兵場も設置され、寿恵子(浜辺美波)が営む待合茶屋に、軍人が数多く通うようになった様子が描かれた。
寿恵子はそもそも渋谷に練兵場ができるという情報をもとに、待合茶屋を開いたはず。それならば彼女の目論見がズバリと当たり、店が繁盛したという物語でいいはずだ。しかし軍人たちが店で気勢をあげる場面ではなぜか画面がモノクロに。その演出に眉をひそめる向きもいるという。
「今回の演出では端々に、戦争で世の中が物騒になったといわんばかりの主張が込められていたように感じます。まるで軍隊や軍人は悪だと言わんばかりのステレオタイプな演出には、制作側の反戦メッセージを感じずにはいられません」(週刊誌記者)
ドラマにメッセージ性がこめられるのはよくあることだが、そもそも本作は植物学者の牧野富太郎博士をモデルとした物語のはず。しかし作中では史実に反する描写も見受けられた。
第108回では日本統治下の台湾に学術研究員して派遣されることになった主人公の万太郎(神木隆之介)が、ピストルを購入せよとの軍からの指示を無視する場面もあった。しかし当の牧野博士は護身用のピストルと弾薬を購入しており、作中ではあえて史実を無視した万太郎像を描いていたのである。
「軍や武器を忌避する描写には、反戦思想の薄っぺらさを感じます。しかも今回、万太郎が淡竹(ハチク)に関して語った場面では、令和の現在までその反戦思想に巻き込むのかと驚きました」(前出・週刊誌記者)
万太郎は送られてきたハチクについて、120年に一度開花すると妻の寿恵子に説明。開花後には竹林全体が枯れ果てるとも語っていた。しかも万太郎の手元にあるハチクはすでに開花していたのである。
これは日露戦争勃発などの世相を凶事と捉え、日本が暗黒期に突入したとの暗喩だろう。しかもハチクはまた120年後に開花するのだから、令和の現在に凶事が再来すると示唆しているも同然だ。
「たしかに現在はウクライナ戦争が継続中なことに加え、日本を取り巻く環境も不穏当だと言わざるを得ません。だからといってその現状を日露戦争当時に例えるのは不適切ではないでしょうか。戦後88年にわたって平和を守り続けている日本ですが、『日本が戦争に突入する』と言い続ける者はあとを絶ちません。よもや政治的に中立公正であるべきNHKが、この時期に反戦メッセージと捉えられかねない描写をすることに、不愉快さを抱く視聴者も少なくないのです」(前出・週刊誌記者)
明治政府が成立する以前の文久2年(1862年)に生まれた牧野博士は、二度の世界大戦を乗り越え、昭和32年(1957年)に92歳で大往生していた。その牧野博士をモデルとする本作にてなにかにつけて反戦メッセージが描かれる様子には、制作側の偏った姿勢を感じる視聴者がいても無理はないだろう。