放送中のNHK朝ドラ「おむすび」を見るたび、最近では悲しい気持ちになるようになった。主人公の橋本環奈演じる米田結が高校を卒業して舞台が神戸に移り、栄養専門学校でサッチンこと矢吹沙智(山本舞香)、カスミンこと湯上佳純(平祐奈)、モリモリこと森川学(小手伸也)らと出会い、面白くなりそうな予感に喜んだのもつかの間、結(橋本)があまりにも「非常識で軽薄で自分勝手なギャル」に変わってしまったからだ。
糸島にいた頃の結は、少なくとも常識があったと思う。糸島東高校の入学式に着崩した制服と金髪という「ギャル丸出し」の姿で向かい、いきなり停学をくらった姉の歩(仲里依紗/少女期は高松咲希)を見ていた結が、「神戸栄養専門学校」の初登校日に「ギャル丸出し」の姿で向かうだろうか。長い付け爪もバサバサの付けまつげやラメのアイシャドーも、食品を扱う学校において非衛生的であることは、落ち着いて考えればすぐにわかることだろう。
さらには、そのことで学校側から注意されることも予測できると思う。さらにクラスメイトを前にした自己紹介で、いきなり「付き合っている彼氏が野球をやっていて、プロを目指しているので、彼を支えるために栄養のことを学びに来ました」などと以前の結だったら決して言わないだろう。こんなことを言われたら、サッチン(山本)でなくても「あんた、舐めとん?」と言いたくなる。
いつの間に結は、こんなに周囲に対して心遣いができなくなってしまったのか。「ギャルの掟その2」にあった「他人の目は気にしない。自分が好きなことは貫け」とは、「自分勝手に生きてOK」という意味ではない。それなのに結は何をしているのか。結が神戸に戻ってきたら失っていた「常識と 落ち着きと 心遣いと」。脳内で替え歌が完成する前に、結のキャラが軌道修正されたらいいのだが。
(森山いま)