都内で映画宣伝会社に勤務している松木真希子さん(35歳・仮名)は、会社のすぐそばに引っ越そうかと真剣に検討している。理由は「遅刻」。
「大作映画のプロジェクトがあって、半年ほど毎日残業続きでした。終わるのは深夜。会社から支給されるタクシー代はすぐに底をついたので、始発まで机で仮眠を取ったりもしました。それが一段落して普通の生活に戻ったのですが、いまも深夜遅くならないと寝付けないんです。そのせいか、朝は起きられない。出社が遅れるので、通常の仕事量であっても、帰るのが終電間際というのが常態化しています」
かなり深刻ですが、それ以上に松木さんが気になっているのが……。
「会う人会う人『具合よくないんですか?』って聞いてくるんです。自分でもクマが凄いし、肌がカサカサになっているのがわかってるんですけど。あと、ストレス解消に毎晩、飲んでるせいか糖質オフをやってるのに全然ヤセないし!」
心も体もおブスになってしまいそうですね。そこで、睡眠障害を専門とするケアクリニック医師に話を聞きました。
「睡眠の悩みとして多いのは、『眠れない』『眠りが浅い』『日中、眠くてたまらない』の3つです。松木さんのように『朝、起きられない』という訴えで来院する患者さんもいらっしゃいます。これらの睡眠障害は医師の治療が必要な場合が多いですが、自分で解決できるものもあります」
下記の不眠チェックリストを見てください。眠れない原因は主に生活スタイルにありそう。であれば十分に改善の余地があります。
□夜更かしをする
□朝寝坊をよくする
□昼夜逆転することが多い
□休日は寝だめをしている
□ストレスを感じることが多い
□夕食の時間が遅く、お腹いっぱい食べてしまう
□忙しくて寝る時間がなかなか確保できない
また、日常的に摂取しているものが睡眠の妨げになっている場合もあります。次のチェックリストを見てください。
□タバコを吸っている
□アルコール摂取量が多い
□コーヒーや緑茶をよく飲む
これらの摂取は、可能な限り控えたほうがよさそうです。では、次の3項目。これらは別の病気が原因で睡眠障害になっている可能性があります。
□夜、何回もトイレに行く
□高血圧や糖尿病などの生活習慣病に心当たりがある
□かゆい、痛い、熱があるなどの症状を伴っている
例えば、血圧が高めでイビキがうるさいと言われたことはありませんか? もし、起きたときに時々、頭痛がするのなら「睡眠時無呼吸症候群」の恐れがありますので呼吸器科に相談を。また、頭痛はないけど、血圧、イビキに心当たりがって、仕事のエンジンがかかるのが夕方以降だという方は「既日リズム睡眠障害」という体内時計と活動のリズムが合わない病気です。睡眠障害専門外来の受診をお勧めします。
また、休日に目が醒めているのに布団から出られない。睡眠時間が足りていないはずなのに早朝に目が覚める。たまに死にたくなるという方は精神疾患(主にうつ)の可能性があります。心療内科・精神科の受診を。
もともと神経質な性格で、寝ている時に金縛りのような感覚にあう、笑ったり、驚いたりすると全身の力が抜ける方で、日中、立ったままでも寝そうになることがあるという方は「ナルコレプシー」という日本では1000人に1人ほどの割合で発症する珍しい病気の可能性があります。専門は精神科・神経科で、薬の服用で改善されます。
放っておけば命取りになりかねない睡眠障害。ちなみに、寝る直前までスマホの画面を見ているのは“睡眠の天敵”なのでご注意を。